お弁当が持ち帰りで崩れない運び方。車と徒歩で分ける
せっかくきれいに詰めてもらったお弁当なのに、家で蓋を開けたら中身が片側に寄っていた。おかずの汁が白いごはんに染みていた。そういう「あと一歩」の残念さは、運び方をほんの少し変えるだけで、かなり減らせます。この記事では、買ったお弁当を崩さず持ち帰るために自分でできることを、車の場合と徒歩・自転車の場合に分けて、置き場所・傾き・保冷剤の判断まで具体的にまとめます。
崩れる原因は「揺れ」より、傾きと隙間
多くの人は「揺れたから崩れた」と考えますが、実際に中身を動かしている犯人は、ほとんどの場合ふたつです。
ひとつは傾き。容器が水平から数度ずれているだけで、汁気のあるおかずはゆっくり低いほうへ流れます。信号待ちのたびに少しずつ移動して、家に着くころには片寄っている。急ブレーキのような派手な動きより、長い時間の小さな傾きのほうが効きます。
もうひとつは隙間。容器の中でおかずと蓋のあいだに空間があると、そこで中身が跳ねます。買ったときは詰まって見えても、時間が経つと蒸気が抜けて少し体積が減り、隙間が生まれる。特にサラダや揚げ物など、かさのあるものほど動きます。
つまり対策は「水平に保つ」と「動ける空間をなくす」の二点に絞れます。ここを押さえれば、運び方の細かい判断は自然と決まっていきます。
車のときは、助手席ではなく足元が基本
車で持ち帰るなら、置き場所の第一候補は後部座席の足元、次点で助手席の足元です。座面ではなく床。理由は三つあります。
床はシートより平らで、座席のように傾斜していません。低い位置にあるのでカーブでの振られ方が小さい。そして万一倒れても落下距離がありません。助手席の座面は、人が座ることを前提に後ろへ傾いているうえ、ブレーキのたびに前に滑ります。荷物を置くには意外と不利な場所です。
そのうえで、足元でも滑らないように工夫します。滑り止めマットやタオルを一枚敷く、紙袋ごと置いて左右を荷物で挟む、といった程度で十分です。紙袋は口を折らずに立てたまま、袋の高さを保ってください。口を折ると中で容器が斜めになります。
複数個を運ぶときは、重ねないのが原則です。どうしても重ねるなら、汁気のないもの・蓋のしっかりしたものを下に。上に載せた重みで下の蓋が押され、そこから汁が回ることがあります。
運転そのものにもコツがあります。効くのは、止まり方より曲がり方。カーブは手前で速度を落として一定で抜ける、坂道では停車位置をなるべく平らな場所に選ぶ。信号待ちで坂に止まると、その数十秒がまるまる「傾いている時間」になります。
徒歩・自転車は、持ち方で水平が決まる
歩いて帰るときにいちばん多い失敗は、袋を腕に掛けて振ってしまうことです。腕に掛けると袋は振り子のように前後に揺れ、そのたびに容器が傾きます。取っ手を手で持ち、袋の底を体の横で安定させるほうが、見た目より効果があります。
距離があるなら、片手をあけて袋の底を下から支える持ち方に切り替えてください。底を支えると水平が保たれ、腕の疲れも分散します。階段の上り下りでは、体が前後に傾いた分だけ袋も傾くので、そこだけ意識して手首で水平を作ります。
自転車は正直に言うと、いちばん崩れやすい運び方です。前カゴは段差の衝撃をそのまま受けますし、ハンドルに掛けるのは容器にとっても走行にとっても勧められません。どうしてもという場合は、カゴの底にタオルを厚めに敷き、袋の周りを他の荷物で固定して、段差の手前で必ず減速する。それでもサンドイッチやのり巻きのように「切り口を見せる」品は、断面が寄りやすいと思っておいたほうがいいです。
リュックに入れるのは、背中で立てて運ぶことになるので基本的には不向きです。汁気のないおにぎりや、深さのある容器で余白の少ないものなら成立します。
汁もれは、蓋よりも「温度差」から起きる
蓋がきちんと閉まっていたのに汁がにじんでいた、というときは、温度が関係していることがあります。
温かい品は、容器の中で蒸気が出ます。密閉された容器が冷えていくと内側の気圧が下がり、蓋のふちに水滴が集まって、持ち上げた拍子にふちから伝う。これは容器の不良ではなく、ふつうに起きる現象です。防ぐには、受け取ってから家に着くまでを短くすること、そして袋の中で容器を横倒しにしないことに尽きます。
もうひとつ、汁気のあるおかずが入っている面を、あらかじめ把握しておくと違います。受け取るときに蓋越しに中身の配置をひと目見ておいて、汁気の多い側を進行方向の後ろ側(車なら車内後方)に向けて置く。加速より減速のほうが回数が多いので、この向きのほうが分がいいです。
店側でも、汁気のあるものを別の容器に分ける、隙間に葉ものを入れて動きを止める、蓋の閉め方を品によって変えるといった工夫はしています。ただ、詰め方でできることには限りがあって、最後の数十分をどう運ぶかは、どうしても受け取った人の手に委ねられます。
季節で変わるのは、保冷剤の要否と「置いていい場所」
保冷剤を入れるかどうかは、一律では決まりません。判断の軸は気温と持ち帰りにかかる時間、そしてすぐ食べるかどうかの三つです。
気温が高い時期は、持ち帰りが短時間でも保冷剤を足しておくほうが安心です。ただし温かい品に保冷剤を密着させると、内側で結露して水っぽくなります。保冷剤は容器に直接くっつけるより、袋の中で少し離して、冷気が上から下へ回る位置に置くほうが扱いやすいです。温かい品と冷たい品を一緒に持ち帰るなら、袋を分けてしまうのがいちばん簡単です。
寒い時期は保冷より、逆に冷めることのほうが気になります。とはいえ車の暖房の吹き出し口の近くに置くと、片側だけ温まって結露します。ここでも足元の、風が直接当たらない場所が無難です。夏の車内は、駐車中に驚くほど温度が上がるので、寄り道の予定があるなら受け取りの時刻を後ろにずらすほうが確実です。
季節を問わず共通するのは、受け取ってから寄り道しないこと。段取りの都合で買い物を先に済ませてから受け取る、という順番にするだけで、崩れも傷みも減ります。
家に着いてからの数分と、うまくいかない日のこと
帰宅したら、袋から出してすぐ平らな場所に置き、数分そのままにします。運んだ直後は中身が動いた状態で落ち着いていないので、その場で開けると寄りが目立ちます。少し置いてから開けるだけでも印象が違います。
蓋を外すときは、汁気の多い側を下に傾けないよう、両手で水平に真上へ。ふちに水滴が溜まっている前提で、ゆっくり持ち上げてください。もし寄ってしまっていたら、無理に元へ戻そうとせず、家の皿に移し替えてしまうほうがきれいに見えます。
正直に書くと、どれだけ気をつけても崩れる日はあります。渋滞に巻き込まれた、思ったより坂が多かった、急に暑くなった。生ものや揚げ物、和えもののように、時間の経過そのものが味を変えてしまう品もあります。そういうときのために、受け取り時刻を「食べたい時刻」から逆算して決めるのが、結局いちばん効く対策です。持ち帰りに何分かかるかを先に見積もって、その分だけ受け取りを遅らせる。当たり前のようでいて、これを一度きちんと計っておくと、次からの精度が上がります。
わたしたちの店でもテイクアウトのご注文を受けていて、受け取り時刻を選んでいただく形にしています。注文のときに「家まで何分くらいかかります」と伝えていただければ、詰め方をそれに合わせて考えられることもあります。遠慮なく声をかけてください。