メガネのこと

メガネの保管とケース選びは「外す場所」から決める

帰ってきて、とりあえず玄関の棚に置く。顔を洗うときに洗面台へ。寝る前は枕元。翌朝、レンズに細かい擦り傷が入っていたり、フレームが少しねじれていたり。ケースは持っているのに、外したメガネがケースに入っている時間はほとんどない——という方は、かなり多いです。この記事では、ケースの硬さや形を比べる前に「どこで外しているか」から保管を組み立てる方法を、家の中の定位置づくりと鞄への入れ方に分けてお伝えします。

ケースを選ぶ前に、一日で「外す場所」を書き出す

ケース選びがうまくいかない最大の理由は、ケースを一つ買えば全部片づくと思ってしまうことです。実際には、メガネを外す場所は一日のなかで何か所もあります。まずは思い出せるだけ書き出してみてください。

  • 帰宅直後、玄関や廊下
  • 洗面所(洗顔、髭剃り、化粧落とし)
  • キッチン(鍋の湯気で曇ったとき)
  • 入浴前の脱衣所
  • 寝る前の枕元やベッドサイド
  • 職場のデスク(画面から目を離すとき、来客のとき)
  • 車の中(乗り降りのとき、サングラスと掛け替えるとき)

書き出すと、たいてい四つか五つは出てきます。このうち「毎日必ず外す場所」は、持ち歩き用のケースでは守れません。ケースは開け閉めに手間がかかるぶん、急いでいるときや濡れた手のときには使われないからです。つまり、家の中はケースではなく置き場所で守る、外はケースで守る。この二つを分けて考えるところが出発点になります。

書き出した場所のうち、傷やゆがみが起きやすいのは「柔らかいものの上」と「高さのある場所」です。布団やソファは踏む・座り込むリスクがあり、棚の縁は落下します。逆に、机の上でも周りにものが多ければ、押しやられてぶつかります。危ないのはどこか、自分の生活のなかで見当がつくはずです。

家の中は、外す場所ごとに「受け皿」を置く

家の中で有効なのは、外す場所それぞれに小さな受け皿を用意することです。浅めのトレイ、小鉢、木の小箱、布を敷いた蓋つきの缶でもかまいません。条件は三つだけです。

1. 底が平らで、メガネがずり落ちない。丸皿の中央が深く窪んでいるものは、レンズが底に触れてしまうことがあります。平らな面か、フレームの幅より少し広い浅い枠が向いています。

2. 定位置が動かない。受け皿ごと片づけてしまうと、結局そのへんに置くようになります。動かさない前提の場所を決めてください。

3. 一歩も歩かなくていい。洗面所で外すのに、置き場所が寝室にあると続きません。「外す動作の延長線上に置き場所がある」ことが、続くかどうかを分けます。

とくに枕元は要注意です。布団の上に置くと、寝返りやシーツをめくる動作で床へ落ち、朝いちばんに踏む、という事故が起きます。ベッドサイドに置ける小さな箱をひとつ置くだけで、この事故はかなり減ります。逆に、家の中でどうしても定位置が作れない場所(キッチンなど)は、そこで外さない工夫のほうが早いこともあります。

レンズを下にしない。置き方の基本はこれだけ

置き場所が決まったら、置き方です。覚えることは一つで、レンズ面を下にしない

レンズの表面にはコーティングがかかっています。硬い机の上にレンズを伏せて置くと、目に見えない細かな砂や食器の粉と擦れて、線状の傷が入ります。傷は消えません。レンズの中央付近に入ると、明るいところで光が散って見えづらさを感じることもあります。

置き方は次のどちらかです。

  • テンプル(つる)をたたんで、レンズ面が上を向くように置く。いちばん簡単で、受け皿がある場合はこれで十分です。
  • テンプルを開いたまま、上下をひっくり返して置く。フレームの上辺とテンプルの先端で支える置き方で、レンズが浮きます。すぐまた掛ける短時間向きです。

もう一つ、たたむ向きにも癖があります。多くのフレームは左右どちらかのテンプルを先にたたむよう設計されていて、無理に逆へ重ねると丁番やテンプルに少しずつ負担がかかります。抵抗を感じる向きがあれば、逆に重ねてみてください。

それから、濡れたまましまわないこと。水洗いしたあとや汗をかいたあとにケースへ入れると、内側の湿気が抜けず、金属部分の腐食やにおいのもとになります。水気を切って乾かしてから収納します。車内に置きっぱなしにするのも避けたいところで、夏場の車内は高温になり、フレームの変形やコートの劣化につながることがあります。

鞄の中で潰れないのは、硬さより「入れる位置」

持ち歩きになると、多くの方が「ハードケースなら安心」と考えます。間違いではありませんが、鞄の中で壊れる原因は落下より面で押される力です。ノートパソコンや厚い本と鞄の壁に挟まれると、硬いケースでも留め具が開いたり、ケースごとたわんだりします。

入れ方で押さえたいのは三点です。

位置は「底の隅」ではなく「壁際で寝かせる」。底の隅は、鞄を置いたときの衝撃が集まります。背中側の壁に沿わせて平らに寝かせると、荷物が動いても圧がかかりにくくなります。

重いものの下に入れない。水筒や書類の下は避けます。逆に言えば、上に何も乗らない位置さえ確保できれば、セミハードでも十分持ちます。

ケースの中で泳がせない。大きすぎるケースは、中でメガネが動いてレンズが内壁と擦れます。ケースを選ぶときは、たたんだ状態を入れて軽く振り、カタカタ動かないかを確かめてください。

もう一つよくある失敗が、拭き布をケースに入れっぱなしにすることです。布は使ううちにほこりや砂を含みます。それがレンズに触れ続ける状態は、傷のもとになります。布は別に持つか、こまめに洗うほうが安全です。

ケースの硬さ・形は、いちばん最後に決めていい

ここまで決まってから、ようやくケースの種類です。判断の材料は「どこに入れて持ち歩くか」だけです。

鞄に入れる・荷物が多い日が多い——クラムシェル型(パカッと開く箱型)。厚みはありますが、外からの圧に強い。

鞄が小さい・服のポケットに入れる——薄いスリップイン型(差し込み式)や柔らかいポーチ。圧には弱いので、上に重いものが乗らない前提で使います。

掛けたり外したりが一日に何度もある——片手で出し入れできる形。開け閉めが面倒なケースは、結局使わなくなります。使われないケースは、性能に関係なく役に立ちません。

併せて見ておくとよいのが、内側の起毛の状態、留め具が勝手に開かないか、そしてフレームの形との相性です。天地の深いフレームや大きめのフレームは、一般的なケースに入らないことがあります。サングラスとメガネを一つのケースに重ねて入れるのも、擦れるので避けたほうがよいです。

うまくいかないこともある、という前提で

正直に書いておくと、置き方を整えても防げないことはあります。落下による丁番の破損、レンズの深い傷は、置き方の問題ではなく事故です。傷ついたレンズは磨いても元に戻りませんし、フレームの素材や年式によっては、部品がなくて直せないこともあります。

そして、これは線を引いておきたいところですが、見えづらさや目の痛み、かすみといった症状は眼科医の領域です。傷や汚れのせいだと思っていたら別の原因だった、ということもあり得ますので、症状が続くときはまず眼科を受診してください。メガネ店でできるのは、見え方の相談と、メガネそのものの調整や作り直しまでです。

そのうえで、店でできることもあります。かけ外しの多い人ほどフレームは緩みやすく、緩んだままだと落としやすくなる、という悪循環が起きます。かけ具合の確認や、鼻あてを別のタイプに替える相談は、実物を見ながらのほうが早く進みます。メガネ・サングラスの売場には一級眼鏡作製技能士が常におりますので、いま使っているメガネと、普段使っているケースをそのまま持ってきていただければ、置き方も含めて一緒に見当をつけられます。

最後に順番だけまとめます。①一日で外す場所を書き出す ②家は場所ごとに受け皿を置く ③レンズを下にしない ④鞄は「壁際に寝かせて、上に重いものを乗せない」 ⑤ケースの形は最後に決める。この順で考えると、買い足す前に片づく部分がけっこうあります。

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