メガネのこと

メガネの洗い方。中性洗剤で1分、拭かずに落とす

レンズをクロスで拭いても、白いモヤが伸びるだけで消えない。息を吹きかけて拭き直しても、光にかざすとまた曇っている。この状態でさらに強く拭くと、汚れは取れないまま細かい傷だけが増えていきます。

この記事では、拭いて落とす前提をいったん手放して、台所で1分でできる「洗う」手順(水温・洗剤の量・水の切り方)と、やってはいけない拭き方をセットでまとめます。

拭いて取れない汚れは、拭いても取れない

レンズにつく汚れは、大きく分けて三つです。まつ毛や指から移る皮脂、空気中の油分やホコリ、そして砂やチリのような固い粒。

このうち皮脂は、時間が経つほど酸化して膜のように固まります。乾いたクロスでこすっても、固まった油は薄く伸びるだけ。だから拭くほどモヤが広がるのです。

もっとやっかいなのが、固い粒。目に見えない砂ぼこりがレンズにのっている状態で乾拭きすると、その粒をレンズ表面で引きずることになります。これが、レンズの細かい傷の大きな原因です。傷は消えません。つまり、汚れたメガネにいきなりクロスを当てるのは、掃除ではなく研磨に近い行為になってしまう。

結論はシンプルで、固まった油と固い粒は、水と洗剤で浮かせて流すのが正解です。

台所で1分。水洗いの手順

特別な道具は要りません。手順は五つです。

1. 水温はぬるいくらい、または常温の水道水

熱いお湯は避けてください。レンズには反射防止などの薄いコートがのっていて、急な熱と膨張の差でひび割れのような跡(クラック)が出ることがあります。プラスチックのフレームも熱で変形します。触って「ぬるい」と感じる程度、迷うなら冷たい水道水で十分です。

2. まず何もつけずに、流水でよくすすぐ

ここを飛ばす人が多いのですが、いちばん大事な工程です。表面の砂やホコリを、指で触る前に水で流してしまう。これで傷のリスクがぐっと減ります。

3. 台所用の中性洗剤を、ごく少量

指先に1滴。それをレンズの表面で泡立てるくらいで足ります。多く使っても落ちがよくなるわけではなく、すすぎが長くなるだけです。洗剤は必ず「中性」を確認してください。ボトルの裏の品質表示に液性が書いてあります。アルカリ性・酸性の洗剤や、研磨剤入りのクリームクレンザー、住居用の洗剤はコートやフレームの塗装を傷めます。

4. 指の腹で、円を描かず前後にやさしく

力は要りません。レンズの表と裏、フチ、鼻あての裏側、フレームとレンズの境目。汚れは境目と鼻あての裏にたまります。爪は立てない。ブラシもレンズには使わない。

5. 洗剤が残らないまで流す

洗剤が残ると乾いたあとに白い跡になります。ぬめりが消えるまで、と覚えておくとちょうどいいくらいです。

水の切り方で、仕上がりが決まる

洗ったあとの拭き取りで台無しにする人が本当に多い。ここが分かれ道です。

まず、軽く振って大きな水滴を落とします。このとき力いっぱい振ると、ネジが緩んだりフレームが歪んだりします。手首を小さく、二、三回で十分です。

次に、柔らかいティッシュや吸水性のあるやわらかい紙で、こすらずに押さえて水を吸わせます。押し当てて離す、を繰り返すだけ。往復させると紙の繊維で細かい傷がつきます。ざらつきのある紙や、香料・保湿成分入りのティッシュは避けてください。成分がレンズに残ります。

最後の仕上げだけ、乾いたメガネ拭きで軽くなでる。この順番なら、クロスを当てる時点でレンズはほぼきれいなので、こする必要がありません。

やってはいけない拭き方をまとめておきます。

  • 汚れたまま、乾いたクロスでいきなりゴシゴシ拭く
  • 服の裾やハンカチで拭く(繊維が硬く、ホコリを含んでいます)
  • 洗ってもいないメガネ拭きを使い続ける(クロス自体が油と砂を抱えています。クロスも中性洗剤で洗い、洗剤の残らないよう干してください)
  • 除菌用のアルコールシートでフレームまで拭く(フレームの塗装や素材によっては、白く濁ったりベタついたりします)
  • ドライヤーで乾かす(熱はレンズにもフレームにも良くありません)

汚れがすぐ戻るのは、拭き方ではなく頻度の問題

ここが本題です。「洗ってもすぐ曇る」「毎日拭いているのにきれいにならない」という方の多くは、拭き方のテクニックが足りないのではなく、洗う回数が少なすぎるだけです。

皮脂は毎日つきます。つきたての油はさっと落ちますが、数日置くと固まって落ちにくくなる。固まってから落とそうとするから力が要り、力を入れるから傷がつき、傷がついたレンズはさらに汚れて見える。この悪循環です。

目安としては、外して置く場所が決まっている人なら、朝か夜のどちらか、洗面所や台所で1日1回。難しければ二日に一度。1分もかかりません。歯みがきのついで、くらいの位置づけで習慣にすると、日中にクロスを当てる回数そのものが減ります。

花粉の時期、揚げ物をよくする家、汗をかく季節、化粧品を使う方は、汚れる速度が速くなります。「拭く回数が増えてきたな」と思ったら、それは洗うサインだと考えてください。

なお、超音波洗浄機を使う手もありますが、ゆるんだネジがさらに緩む、貼り付けタイプの装飾やパーツが外れる、といったことは起こり得ます。使うなら、洗ったあとにネジのゆるみを確認する前提で。

洗っても直らないことも、正直にあります

洗ってすっきりしない場合、汚れではない可能性があります。

傷はもちろん戻りません。また、長く使ったレンズは、コートの表面に細かいひび(クラック)が入って、洗っても曇って見えることがあります。これは劣化なので、手入れでは解決せず、レンズの交換で考える話になります。フレームが歪んでいて左右のレンズの位置がずれている場合も、見え方の違和感として出ます。

大事な線引きをひとつ。「洗ったのにかすむ」「片方だけぼやける」「まぶしさが増した」といった見え方や目の症状そのものは、眼科医が診る領域です。目の不調を感じるときは、まず眼科を受診してください。メガネ店でできるのは、見え方についてのご相談と、フレームのかけ具合の調整、レンズの状態の確認までです。

そのうえで、歪みやネジの緩み、鼻あてのへたりは、実物を見ながらでないと判断がつきません。かけている姿を横から見せていただくと、傾きや左右差はすぐに分かります。メガネの売場には一級眼鏡作製技能士がいますので、洗っても取れないモヤの正体が汚れなのか、レンズや歪みの側なのか、迷ったらそのままお持ちください。手入れの方法も、レンズのコートやフレームの素材によって向き不向きがあるので、お使いの一本に合わせてお話しできます。

洗い方そのものは、覚えてしまえば1分です。拭く技術を上げるより、洗う回数を増やすほうが、レンズはずっと長くきれいなままでいてくれます。

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