暮らしの道具

キッチン道具が増えすぎたら、1週間の使用記録から

引き出しが閉まらない。奥で菜箸が引っかかって、開けるたびに手で押さえている。ピーラーが二本あるのは知っているけれど、どちらを捨てていいのか分からない。――道具が増えすぎた台所は、だいたいこういう状態から始まります。この記事では、収納を工夫する前に「1週間、何を使ったか」を記録して、残す・手放す・買い替えるの3つに分ける手順と、そのうえで買い足すなら何を選ぶかまでをまとめます。

収納を見直す前に、増えすぎの原因を一つに絞る

道具が増えすぎたとき、多くの人がまず仕切りケースを買いに行きます。けれど仕切りを足しても、入っている総量は変わりません。しばらくすると、仕切りごと入らなくなります。

増えすぎの原因を細かく挙げるときりがないのですが、現実に効いてくるのはひとつだけです。「使っていないのに、捨てる理由も見つからない道具」が居座っていること。壊れていない。汚れてもいない。いつか使うかもしれない。この三拍子がそろうと、人は判断を先送りします。そして先送りされた道具は、引き出しの奥という一番取り出しにくい場所に、一番長く居続けます。

ここで必要なのは、捨てる決断力ではありません。判断の材料です。「いつか使うかもしれない」に対して、「この1週間、一度も手に取らなかった」という事実をぶつけると、話が前に進みます。記録から始めるのは、そのためです。

1週間、使った道具だけを別の場所に戻す

やり方はとても単純です。メモも表も要りません。

使った道具を、元の引き出しに戻さない。別に決めた一か所に戻す。 これだけです。

準備するのは、空いているカゴか、トレイか、何もなければ調理台の端のスペースでかまいません。洗って乾いた道具を、そこに置いていきます。翌日も、その次の日も、使ったものはそこから取って、またそこへ戻す。

1週間続けると、台所が勝手に二つに分かれます。

  • 新しい置き場にあるもの = この1週間で実際に手が動いたもの
  • 元の引き出しに残ったまま動かなかったもの = 1週間、一度も要らなかったもの

文字で読むとあたりまえに思えますが、実際にやると驚くほど差が出ます。毎日使っていると思っていた道具が動かなかったり、逆に「たまにしか使わない」と思っていたものが毎日出ていたりします。記憶と実態はかなりずれています。

いくつか、つまずきやすい点も書いておきます。

期間は1週間から10日。短すぎると偏りますし、1か月にすると今度は最後まで続きません。週末と平日を両方含む7日間が、いちばん現実的です。

「使った」の定義を緩めない。出したけれど結局使わなかったもの、一度握って戻したものは、使っていない側です。ここを甘くすると記録の意味がなくなります。

来客や行事のある週は避ける。普段の生活を測りたいので、特別な週は外します。逆に、来客用の道具をどうするかは後述の判断で別枠に扱います。

一人暮らしでない家庭は、家族にも伝えておく。何も言わずにやると、片づけ忘れだと思われて元に戻されます。

1週間後、3つの山に分ける

期間が終わったら、動かなかった道具を引き出しから全部出します。床でも食卓でもいいので、一度並べてください。そのうえで、次の3つに分けます。

残す

動かなかったけれど、使う場面が具体的に言えるもの。

大事なのは「言えるかどうか」です。「お正月に使う」「カレーを作るときの大きい鍋」「子どもの弁当の日に使う型」。日付や料理名まで出てくるものは残します。逆に「何かのときに」「あると便利そう」としか言えないものは、残す側ではありません。

季節や行事でしか使わない道具は、残したうえで毎日使う引き出しから出す。別の棚や戸棚の上段へ移します。引き出しが閉まらない原因は、年に一度の道具が毎日の一等地にいることだったりします。

手放す

次のどれかに当てはまるものは、手放す側に寄せていいと思います。

  • 同じ役割のものが2つ以上あり、どちらか片方しか使っていない(ピーラー、おたま、フライ返し、計量スプーンなどで起きがちです)
  • 使わない理由がはっきりしている。重い、洗いにくい、分解できない、取っ手が邪魔。これらは今後も改善しません
  • 使うたびに別の道具で代用している

「もったいない」が出てくるのは当然です。ただ、使わない道具を持ち続けるコストは、毎日の開け閉めのストレスとして払い続けています。どうしても決められないものは、箱にまとめて見えない場所へ置き、1か月後にもう一度見る。そのとき箱を開けずにいられたものは、だいたい手放して問題ありません。

買い替える

よく使っているのに、使い心地に不満があるもの。ここが見落とされがちです。

毎日使っている道具こそ、小さなストレスが積み重なります。刃が滑るピーラー、鍋肌に届かない短いへら、持ち手が熱くなるフライパン。こういうものは減らす対象ではなく、入れ替える対象です。数を減らすことだけを目的にすると、この山を見逃します。

買い足すなら、兼用できる形から選ぶ

手放した分だけ空きができるので、ここで買い足しの話になります。ここでまた同じことを繰り返さないために、「兼用できるか」を先に見るという基準をおすすめします。

見るポイントは、だいたい次の4つです。

1. ひとつの道具で、2つ以上の工程をこなせるか

たとえばシリコン製のへらは、混ぜる・返す・こそげ取るを一本でこなせます。深めのフライパンは、焼くと煮るの両方に使えます。片手鍋は、茹でる・温める・少量の揚げ物まで届きます。一方で、ひとつの料理のためだけに形が決まっている道具は、兼用が効きません。買う前に「これで他に何ができるか」を2つ挙げられるかを確かめてください。

2. 洗いやすい形か

兼用できるかどうかは、結局「使うたびに洗う気になるか」で決まります。分解できる、または最初から継ぎ目がない。網目や溝が少ない。ここが面倒だと、兼用するはずが「使われない道具」に戻ります。

3. 収まるサイズか

引き出しに入るか、立てて置けるか。柄の長さは意外と効きます。買う前に、引き出しの内寸を測っておくと失敗が減ります。実物を見られる場所なら、手に持って長さを確かめるのがいちばん早いです。

4. 複数の道具を置き換えられるか

理想は、新しく1つ買って、古い2つを手放せる形です。買い足して総量が増えるなら、それは兼用ではなく追加です。

ただし、兼用が向かない場面もあります。まな板のように衛生面で分けたほうがいいもの、よく使うサイズの鍋のように同時に2つ必要になるもの。「全部ひとつに」は無理があります。兼用で減らせるのは、たまにしか使わない道具の側だと考えてください。

うまくいかないときと、現実的な落としどころ

正直に書いておくと、この方法で全部が片づくわけではありません。

家族と共有している台所では、自分の判断だけで手放せません。使っていないように見えても、他の人が月に一度使っていることがあります。記録期間中に動かなかったものでも、いきなり処分せず、一度声をかけてください。

記録そのものが続かないこともあります。戻す場所を変えるだけとはいえ、忙しい週は忘れます。3日で途切れたら、3日分として扱ってかまいません。完璧な記録より、途中までの記録のほうがずっと役に立ちます。

1回で引き出しが閉まるようになるとは限りません。1周目は判断の練習だと思っておくと気が楽です。半年後にもう一度同じことをすると、前回は決められなかったものが、あっさり決まったりします。

そして、増えすぎの一番の予防は、買うときにあります。新しい道具を手に取ったとき、「これで何ができるか」だけでなく、「これを入れたら、代わりに何が出ていくか」を一緒に考える。この一手間があるだけで、引き出しの中身はかなり変わります。

道具は、カタログの写真では重さも持ち手の太さも分かりません。実際に握ってみて、引き出しの長さを思い浮かべながら選べると、兼用できるかどうかの判断はずっと正確になります。暮らしの雑貨の売場でも、「今あるものと入れ替えたいんですが」という相談から始まる日は多いです。決めきれないまま持って帰るより、サイズを測ったメモを持って見に行くほうが、結果的に早く片づきます。

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