古いメガネはどうする?残す1本の決め方
引き出しを開けると、古いメガネが三本も四本も出てくる。捨てるのはなんとなく気が引けるけれど、取っておく理由もはっきりしない。そんな状態のまま、何年も放置されている引き出しは珍しくありません。この記事では、捨て方の話ではなく「どれを残すか」を先に決めるための手順を、度数・状態・用途の順でご案内します。
迷いの正体は「全部に理由がある」こと
古いメガネが減らないのは、優柔不断だからではありません。一本ずつ見ると、どれにも残す理由があるからです。
「度数が合わなくなっただけで、まだ壊れていない」「気に入って買ったもので、デザインは今でも好き」「いざというときの予備になるかもしれない」。どれも間違っていません。ただ、この理由は何本にでも当てはまってしまう。だから一本ずつ眺めている限り、永遠に減りません。
順番を逆にします。まず「予備として実際に働く一本」の条件を決める。その条件に合うものを一本だけ選ぶ。残りは、条件に合わなかったものとしてまとめて扱う。こうすると、一本ずつの思い出と向き合わなくて済むぶん、判断が早くなります。
大事なのは、予備を何本も持っても予備として機能しないという点です。壊れた朝に手に取るのは一本だけ。その一本が使えなければ、何本あっても同じことになります。
条件1:度数——「いつ作ったか」より「今かけて歩けるか」
最初に見るのは度数です。ここで多くの方がつまずくのは、「何年前に作ったか」で判断してしまう点です。年数は目安にはなりますが、決め手にはなりません。同じ三年前でも、見え方の差が大きい人もいれば、ほとんど変わらない人もいます。
家でできる確かめ方は、机の上で比べるのではなく、立って動いてみることです。古いメガネをかけて、部屋の中を普通に歩く。足元を見る、ドアノブに手を伸ばす、スマートフォンの画面を見る、窓の外の景色を見る。この四つを一分ほど続けてみてください。
判断の基準はこうです。
- 日常の動作にほぼ支障がない → 予備候補として残す
- 少し見づらいが、家の中で過ごすぶんには困らない → 室内限定の予備として残す候補
- 歩くと足元が不安定に感じる、文字がはっきりしない → 予備としては外す
注意していただきたいのは、ここで分かるのは「今の自分にとって使えるかどうか」だけだという点です。見えづらさの原因が度数にあるのか、別のところにあるのかは、この方法では分かりません。目の症状や病気については眼科医の領域です。かすむ、まぶしい、片方だけ見えにくい、頭が痛くなるといったことが続くときは、仕分けの前に眼科で診てもらってください。メガネ店でできるのは、見え方のご相談と、メガネそのものの調整です。
もう一つ。複数の古いメガネを比べたとき、「いちばん新しいもの」が必ずしもいちばん見やすいとは限りません。順番ではなく、実際にかけた感じで選んでください。
条件2:状態——曲げ戻せる歪みか、戻らない傷みか
度数で候補が絞れたら、次はモノとしての状態です。ここは机に置いて見ます。
平らな机に、レンズを上にしてメガネを置き、真横から目線を落とす。左右のテンプル(つる)の先が、同じように机に触れているか。片方だけ浮いていれば歪みです。歪みそのものは、多くの場合お店での調整で戻せます。これは「外す理由」にはなりません。
外す理由になるのは、戻りにくい傷みのほうです。
- 丁番(折りたたむ関節)がぐらぐらして、ネジを締めても戻らない
- ネジが欠けている、または締めてもすぐにゆるむ
- 金属部分にサビが出て、表面が粉を吹いたようになっている
- フレームにひび割れがある、塗装が広い面積で浮いている
- レンズの中央、視線がいちばん通る位置に深い傷がある
このあたりが出ているものは、いざというときに取り出しても使えない可能性が高くなります。予備の役割は「困った朝にそのまま使えること」ですから、点検や修理が前提のものは予備になりません。
一方で、鼻パッドが黄ばんでいる、硬くなっている、といったものは交換できる部品です。レンズの傷も、外周寄りの浅いものなら実用に響かないことがあります。この見分けは実物を見ないと判断しにくいので、迷ったら一本だけ持って相談してみてください。
条件3:用途——予備の一本には「置き場所」が要る
度数が通り、状態も悪くない。それでも、使われないまま引き出しに戻る一本があります。理由は単純で、置き場所が決まっていないからです。
予備として機能する一本には、必ず居場所があります。たとえば、
- 寝室の枕元近く:夜中や朝いちばんに必要になったとき
- 職場のデスクの引き出し:持ってくるのを忘れた日、壊れた日
- 車の中:ただし夏場の高温は樹脂やコーティングに負担がかかるため、置きっぱなしは避ける
- 旅行カバンの中:出先で壊れたら困る旅のときだけ入れる
置き場所を一つ決めて、そこに入れる。この作業をして初めて、その一本は予備になります。逆に言えば、置き場所が思い浮かばないメガネは、残しても使われません。
また、度数が少し古くても「室内でしか使わない」と決めれば使えることがあります。家の中は距離が短く、歩く速さもゆっくりです。外出用には足りなくても、家用としてなら働いてくれる一本というのは、実際にあります。この場合も、「洗面所の棚」「ソファの横」といった置き場所まで決めてしまうと確実です。
残らなかった分を、どう考えるか
仕分けが終わると、手元には「予備の一本」と「それ以外」が残ります。それ以外の扱いは、無理に急がなくてかまいません。ただ、引き出しに戻すのではなく、箱なり袋なりにまとめて一か所に移すだけで、気持ちの整理はだいぶ進みます。
考え方として、三つの行き先があります。
ひとつ目は、フレームを活かす道です。気に入っているフレームなら、レンズだけ入れ替えて現役に戻せる場合があります。ただしこれは、枠がもう一度しっかり締まるかどうか、素材が年数に耐えているかどうかで判断が分かれます。フレームが古くなっていると、加工の過程で割れることもあり、お引き受けできないこともあります。実物を見せていただかないと何とも言えない、というのが正直なところです。
二つ目は、記念として残す道です。年数の経ったフレームを、使う予定はないけれど取っておく。これは納得して決めているなら、まったく問題ありません。困るのは「なんとなく」残っている状態だけです。
三つ目は、手放す道です。自治体によって分別の区分が違うため、お住まいの地域のルールをご確認ください。
うまくいかないこともあります。たとえば、予備にしようと思っていた一本が、実際にかけてみると思った以上に見づらかった。あるいは、調整に出したら思っていたより傷みが進んでいた。こうしたことは起きます。そのときは「予備がない状態」だと分かったこと自体が収穫で、次の買い替えのときに二本目をどう残すかを先に考えられるようになります。
決める順番のまとめと、実物で確かめられること
手順を並べると、こうなります。
- 古いメガネを全部出して、並べる
- 一本ずつかけて、部屋の中を一分歩く(足元・手元・遠く)
- 日常の動作に支障がないもの、室内なら使えるものを選ぶ
- 机に置いて、丁番・ネジ・サビ・ひび割れ・レンズ中央の傷を見る
- 残った中から一本だけ選び、置き場所を決めて、そこに入れる
- それ以外は一か所にまとめ、レンズ交換・保管・手放すのどれかを後日決める
この順番でやると、「捨てるかどうか」で悩む時間がほとんどなくなります。決めているのは残す一本だけで、あとは自動的に決まるからです。
家で判断しきれないのは、歪みが調整で戻る範囲かどうか、レンズの傷が実用に響くかどうか、フレームがもう一度レンズを入れられる状態かどうか、の三点です。これは触ってみないと分かりません。候補の一本を持って、売場で見てもらうのがいちばん早い部分です。かけたまま調整して、その場でかけ心地を確かめられるのは、実物があるところの利点だと思います。
メガネ・サングラスの売場には一級眼鏡作製技能士が常駐していますので、「この一本を予備にしたいのですが、使えますか」という聞き方で持ってきていただければ、状態を見ながら一緒に考えられます。見え方の面で気になることがある場合は、まず眼科でご相談いただくことをおすすめしています。