メガネは湿気で劣化する。置き場所3か所を見直す
梅雨の時期になると、「鼻あてが黄色っぽくなってきた」「フレームの塗装が点々と浮いている」「ネジのまわりに茶色いものが出ている」というご相談が増えます。曇りの話はよく聞くけれど、パーツそのものの変化については、どうしたらいいのか分からないまま使っている方が多いようです。
この記事では、曇りではなく「湿気が抜けない置き場所」に絞って、メガネを置きがちな3か所で何がどう進むのかを部位ごとに結びつけ、置き場所を移すだけでできる対処までを順に書きます。
劣化は「濡れた瞬間」ではなく、「乾かない時間」で進む
先に、考え方をひとつ。
メガネは水に強い道具です。水道の水で洗って拭き上げるくらいでは、まず何も起きません。問題になるのは、濡れたことそのものではなく、濡れたまま置かれている時間の長さです。
湿気で起きる変化は、だいたい次の3つに分かれます。
- 鼻パッド(シリコン・樹脂)の黄ばみ・白濁・べたつき……皮脂や化粧品が付いたまま、湿った空気の中に置かれると進みやすい
- フレーム塗装・メッキの浮き、点状の腐食……金属と塗膜のあいだに水分が入り、内側から押し上げる
- ネジ・丁番まわりのサビ……細い隙間に入った水が、いちばん乾きにくい
どれも「一晩で」起きることではありません。数週間から数か月、同じ場所に置き続けた結果として出てきます。だからこそ、置き場所を変えるだけで進み方が変わります。
そして逆にいうと、いったん進んでしまった黄ばみ・浮き・サビは、基本的には元に戻りません。ここは正直に書いておきます。対処というより、これ以上進ませない話になります。
置き場所1:洗面所 ―― 鼻パッドの黄ばみが、いちばん進む場所
朝の支度でメガネを外し、洗面台の隅にそのまま置く。夜もお風呂の前に外して同じ場所に置く。これが、いちばんよくあるパターンです。
洗面所がメガネにとって厳しいのは、次の条件がそろうからです。
- 入浴後、長い時間にわたって湿度が高いままになる
- 顔まわりの製品(化粧品、整髪料、洗顔料の飛沫)が空気中に舞う
- 窓がない、または閉め切りのことが多い
この環境でいちばん先に変化が出るのが、鼻パッドです。鼻パッドは柔らかい樹脂やシリコンでできていて、表面に皮脂や化粧品の成分が残りやすい。それが湿った空気の中で酸化していくと、黄ばみや、うっすら白くくもったような濁りになります。触るとわずかにべたつく、というのも同じ系統の変化です。
見分け方としては、両方の鼻パッドが同じくらい黄ばんでいるかを見てください。左右そろって均一に黄ばんでいるなら、使用と保管環境による経年変化と考えていい。片側だけ極端に色が変わっているときは、かけ方の偏りで片側にだけ汚れがたまっている可能性があります。
対処はシンプルで、洗面所を「外す場所」にしないこと。洗面所で外すのをやめるのが難しければ、外したあとに持って出る動線を作ります。洗面台の隅ではなく、脱衣所の外側の棚や、廊下側の定位置へ。たった1メートル動かすだけでも、湿度の条件はかなり変わります。
鼻パッドは、黄ばみが出たら交換できるパーツでもあります。フレームの形式によって使える部品が違うので、気になったら外さずにそのまま見せてください。
置き場所2:車のダッシュボード・ドアポケット ―― 塗装の浮きと、熱の問題
次に多いのが、車の中に置きっぱなしにするパターンです。運転用のサングラスや、予備のメガネを車に常備している方は、特に当てはまります。
車内は、湿気の話と熱の話が同時に効いてきます。
雨の日に乗り込むと、傘や衣服から持ち込んだ水分で車内の湿度は一気に上がります。そこへ日中の日射しが加わると、高温多湿を一日のうちに何度も繰り返すことになる。この温度と湿度の上下が、フレームにとってはいちばん負担が大きい条件です。
ここで出てくるのが、塗装やメッキの浮きです。金属フレームの表面には薄い塗膜やメッキ層があり、その下に水分が入り込むと、温度変化で膨張・収縮を繰り返すうちに少しずつ押し上げられます。最初は小さな点、やがてまわりが欠けて地の金属が出てくる。テンプル(つる)の先のほう、鼻あての足の付け根、丁番のすぐ横など、手が触れる場所と、構造が複雑な場所から出やすい傾向があります。
プラスチック系のフレームなら、別の出方をします。高温で柔らかくなった状態のまま、ドアポケットやシートの隙間で押されると、形がわずかに変わって戻らない。かけたときに片側だけ浮く、耳の当たりが変わった、という形で気づくことが多いです。
対処は、車に「置きっぱなし」にしない。これに尽きます。どうしても車に常備したいなら、ダッシュボードの上やドアポケットではなく、グローブボックスの中など直射日光の当たらない場所に、ケースに入れて置く。ケースは、閉め切った空間の湿気をそのまま閉じ込めることもあるので、雨の日に濡れて乗り込んだときは、家に持ち帰って一度開けて乾かしておくと安心です。
塗装の浮きは、残念ながら元には戻せません。ただ、浮きが広がっている範囲と場所によっては、まだ普通に使い続けられることもあれば、金属が露出して肌に当たる状態になっているなら考えどころ、という判断の分かれ目があります。
置き場所3:カバンの中 ―― ネジと丁番のサビは、ここで進む
三つ目が、カバンの中です。ケースに入れていても、入れていなくても、カバンの中は意外と湿気がこもります。
理由は三つ。外から持ち込んだ水分(折りたたみ傘、ペットボトルの結露、濡れた上着)が中に残ること、布や革が水分を抱えること、口を閉じている時間が長いことです。梅雨から夏にかけては、汗をかいた体に密着した状態で持ち歩くことも加わります。
ここで進みやすいのが、ネジと丁番まわりのサビです。ネジは細く、丁番は金属どうしが噛み合う隙間が多い。この隙間に入った水分は、表面を拭いても届かないし、自然には乾きにくい。そのまま長く置かれると、ネジ頭のまわりに茶色い点が出たり、開閉したときに「ジャリ」とした抵抗を感じるようになります。
確かめ方としては、
- 明るいところで、丁番のネジ頭を真上から見る。十字の溝に茶色い色が残っていないか
- テンプルをゆっくり開け閉めして、引っかかりや音がないか
- ネジが緩んでいないか(緩みとサビは、同時に起きていることが多い)
サビが出たネジは、締めようとして回すと頭がつぶれることがあります。自分で工具を当てる前に、一度見てもらったほうが安全です。つぶれてしまうと、取り外す作業そのものが難しくなります。
対処は、カバンに入れっぱなしにしないことと、濡れた日は帰宅後にカバンから出すこと。それだけでも、乾く時間が確保できます。ケースに入れて持ち歩く場合、雨の日に一緒に濡れたなら、ケースごと開けて風の通る場所に置いておく。乾いたケースに乾いたメガネを戻す、という順番です。
置き場所を移すだけの対処 ―― 家の中で「乾く定位置」を1つ作る
ここまでを、やることだけにまとめます。
1. 家の中に、乾く定位置を1つ決める
条件は、「湯気が届かない」「直射日光が当たらない」「風が通る」の3つ。リビングの棚、寝室のチェストの上、玄関の収納の上など、水まわりから離れた場所です。レンズを下にしない置き方(テンプルをたたんで、レンズ面が上を向くように伏せない)だけ守れば、受け皿は小皿でもトレーでもかまいません。
2. 濡れた日は、しまう前に乾かす時間を作る
雨に濡れた、汗をかいた、洗ったという日は、ケースやカバンに戻す前に、定位置で10分ほど置いておく。拭くだけでは、丁番の隙間の水分は抜けません。
3. 季節の変わり目に、1回だけ点検する
梅雨入り前と、夏が終わったころ。鼻パッドの色、丁番のネジ頭、塗装の点状の浮き。この3か所を明るいところで見るだけで十分です。
4. 置き場所を減らす
外す場所が家の中で4か所も5か所もあると、湿気の高い場所に置かれる確率がそのぶん上がります。2〜3か所に絞るほうが、結果的に管理しやすくなります。
なお、見え方そのものについては、ここまでの話とは別の領域です。湿気の多い時期に「見えにくい」「目が重い」と感じたとしても、それが何によるものかは、メガネ店では判断できません。眼の症状や病気については眼科医の領域です。気になる症状が続くときは、まず眼科を受診してください。メガネ店でできるのは、見え方についてのご相談と、メガネそのものの調整です。
うまくいかないこと、店で確かめられること
正直に書いておくと、湿気による劣化には、こちらで手を出せないものがあります。
- 一度浮いた塗装・メッキは戻せない。部分的な補修ができる場合もありますが、素材と範囲によります
- 鼻パッドの黄ばみは、洗っても抜けない。交換という選択になります
- 進んだサビは、磨けば見た目は整っても、金属が痩せた分は戻らない
- フレームの形式によっては、交換部品が手に入らないこともあります
一方で、見ないと分からないことも多いです。「サビているように見えて、ただの汚れ」ということも、「まだ使えると思っていたら、ネジ穴のほうが先に限界だった」ということもあります。パーツの状態は、写真や言葉の説明より、現物を手に取って、開け閉めして、明るいところで見るのがいちばん早い。
メガネの売場では、メガネ・サングラスの担当がかけ具合を見ながら、気になる箇所を一緒に確認しています。持っていくときは、普段どこに置いているかを一言添えてもらえると、原因の見当がつけやすくなります。洗面所なのか、車なのか、カバンなのか。それが分かると、「次の一本をどこに置くか」まで含めて話ができます。
湿気そのものは、どうにもなりません。できるのは、置き場所を数十センチ動かすことくらいです。ただ、その数十センチで、数年後のメガネの状態はけっこう変わります。