メガネのこと

家用メガネは室内の3距離を測って決める

帰宅してメガネをかけたまま過ごしていると、夕方あたりから妙に落ち着かない。かといって外すと、テレビの字幕がぼやけるし、台所の手元も心もとない。かけても外してもしっくりこない、という相談は季節を問わずいただきます。

この記事では、家の中にある3つの距離を実際に測って、外出用より弱い度数で「家用・部屋用の一本」を組み立てる考え方をお伝えします。

家でしっくりこないのは、メガネが「外の距離」で作られているから

普段お使いのメガネは、たいてい遠くがはっきり見えるように作られています。基準になっているのは、運転中の標識や、道の先の人の顔。だいたい5メートルより向こう側の世界です。

ところが家の中を見渡すと、5メートル先を見る機会はほとんどありません。いちばん遠くてもソファからテレビまで、長くても3メートル前後。多くの時間は、1メートル以内の手元を見て過ごしています。

つまり家の中では、遠くに合わせた度数の「遠くを見る力」が、ほとんど使われないまま働いている状態になります。これが合う人もいれば、窮屈に感じる人もいる。家でかけ続けるのがつらい、という感覚の背景には、この距離のズレがあることが少なくありません。

逆に外してしまう人は、手元はちょうどよくても、少し離れたテレビや壁の時計がぼやける。どちらも「家の距離に合った一本がない」という同じ話です。

まずメジャーを持って、室内の3距離を測る

感覚で「だいたい2メートルくらい」と見積もると、実際とは1メートル近く違うことがよくあります。面倒でも、一度だけ測ってください。測るのは次の3つです。

1. いつも座る場所から、テレビ(または画面)まで ソファや椅子に実際に座って、目から画面の中心までを測ります。ここが家の中の「いちばん遠い距離」になることが多い。

2. 手元で見るものまで 本、スマートフォン、新聞、編み物。普段の姿勢で持ったときの、目から紙面までの距離です。30センチ台の人もいれば、45センチくらいの人もいて、ここは個人差が大きいところです。

3. 台所に立ったときの手元まで まな板の上、鍋の中。立った姿勢で、目から調理台までを測ります。手元の本より少し遠く、50〜60センチあたりに来る人が多い距離です。

測ったら、それぞれの横に「1日にだいたい何分そこを見ているか」も書き添えてください。数字が3つ並ぶだけで、話はかなり具体的になります。

数字を見て、1位と2位だけ決める

3つ全部を完璧に満たす一本は、現実にはなかなかありません。ですから、時間の長い順に1位と2位を決めます。そこまで決まれば、組み立て方はほぼ見えてきます。

手元が1位で、テレビが2位の人。読書や手仕事の時間が長いタイプです。手元の距離に合わせた度数を軸にして、室内の中間くらいまで無理なく見える範囲を確保する、という組み方になります。

テレビが1位で、手元が2位の人。この場合も基準は「家のいちばん遠い距離」であって、外の遠くではありません。3メートルに合わせれば、外用より弱い度数で済みます。弱くなるぶん、近くを見るときの度数の差が小さくなり、手元まで見やすい範囲が広がりやすくなります。

台所が1位の人。50〜60センチという距離は、手元用だと遠すぎ、外用だと近すぎて、どちらからも外れやすい位置です。ここを基準に据えると、立ったまま過ごす時間がずいぶん落ち着きます。

手元と離れた場所を1本でまたぎたい場合は、室内向けに設計された中近レンズという選択肢もあります。中間の見え方をどのあたりに置くかは幅があって、遠く寄りに振れば室内の奥まで見やすくなり、手元寄りに詰めれば机の上が広く使える。このさじ加減は、測った数字と生活の話を突き合わせながら決めていく部分です。

家用にしたときに、不便になること

いいことばかりではないので、先に書いておきます。

いちばん多いのは、そのまま外に出てしまうことです。家用は遠くがはっきり見えません。玄関先の数歩ならともかく、運転は論外です。置き場所を玄関から離す、外用と見た目を変えておくなど、取り違えない工夫を同時に決めておいてください。

次に、部屋の模様替えで前提が崩れること。ソファの位置を変えてテレビまでの距離が1メートル変わると、せっかく合わせた見え方がずれます。引っ越しや家具の入れ替えの予定があるなら、それが済んでから作るほうが確実です。

そして、度数を弱くしすぎると今度は画面が物足りなくなる。「楽なほうがいい」と弱さに寄せすぎた結果、テレビの字幕を見るのに身を乗り出すようになっては本末転倒です。基準はあくまで測った数字で、感覚で下げないこと。

家族と兼用できないか、という質問もいただきますが、距離も見え方も人それぞれなので、ここは分けて考えたほうがいいところです。

「疲れる」が続くときは、メガネの外側の話かもしれない

ここは線を引いておきます。かすむ、まぶしい、頭が重い、片目だけ見えにくい、見え方が最近急に変わった。こうした目の症状や不調は、眼科医が診る領域です。メガネ店にできるのは、見え方の希望をうかがってレンズを組み立てることと、かけ具合を調整することまで。そこから先には踏み込めません。

また、家で感じる見づらさの原因が、度数ではなく部屋の明るさや画面の位置、椅子の高さにあることもあります。メガネを新しくしても変わらない場合は、環境のほうを疑ってみてください。メガネで解決できることと、できないことがあります。

決める順番と、実物で確かめたいこと

整理すると、こうなります。

  1. 室内の3距離を、普段の姿勢で測って書き出す
  2. それぞれに1日の時間を書き添え、1位と2位を決める
  3. その距離を基準に、外用より弱い度数で組めるかを相談する
  4. 外用との取り違えを防ぐ置き場所と見分け方を、同時に決める

店で確かめたいのは、測った距離が実際にどう見えるかです。かけたまま店内で2〜3メートル先を見て、それから手元の文字に視線を落としてみる。その行き来が自然にできるかどうかは、数字ではなく体の感覚でしか分かりません。測ったメモを持っていくと、話がずいぶん早く進みます。

HAUSのメガネ売場でも、一本ですべてをまかなうのではなく、室内寄りのレンズを別に組むご提案をすることがあります。検眼は無料で、一級眼鏡作製技能士が常駐していますので、「家で過ごす時間のほうが長い」という方は、測った3つの数字を持って気軽に声をかけてください。

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