暮らしの道具

器を重ねると傷がつく。高台の形から見直す

食器棚から一枚取り出して、光にかざしたときに底に細い輪っかの傷が見えた。縁を指でなぞったら、小さく引っかかるところがあった。長く使っていればある程度は仕方ないと思いつつ、気に入っている器ほど気になります。この記事では、収納のテクニックではなく「器の側から見て、何と何なら重ねていいのか」を、高台の形と素材、そして出し入れの回数から決める順番でまとめます。

傷は「重ねたとき」ではなく「滑らせたとき」についている

先に、傷の付き方を分けておきます。器の底を見て、同じ向きにそろった細い線や、うっすらした輪が見えるなら、それは擦り傷です。重みで付いたのではなく、上の器を回しながら抜いたり、下の器の上を滑らせて引き出したときに付きます。

もうひとつは、縁の小さな欠けやカケの起点になる点状の傷。これは上の器の高台(底の輪っか)が、下の器の縁の近くに乗っているときに出ます。重なっているように見えても、荷重が縁の一点に乗っていると、出し入れのたびにそこだけが叩かれます。

つまり、傷の原因は「重ねたこと」そのものより、接している場所と、動かし方です。ここを押さえると、全部をばらす必要はないと分かります。

まず高台を触る。ざらつきと径で、重ねていい相手が決まる

器をひっくり返して、高台を指の腹でなでてみてください。釉薬がかかっておらず、ざらっとした土や素地がそのまま出ている器が多いはずです。焼くときに棚板にくっつかないよう、そこだけ釉を抜いてあるからです。

このざらつきが、下の器の見込み(内側)を削ります。とくに磁器の高台は硬く、細かい砂のような手触りのものがあります。ざらつきが強いと感じたら、目の細かい紙やすりで軽くならす方法が昔から知られていますが、釉薬にかかると曇るので、やるなら素地の部分だけ、力を入れずに、が前提です。不安なら触らないでおくほうが無難です。

次に径を見ます。上に乗せる器の高台の外径が、下の器の「底の平らな部分」の内側に収まるか。収まっていれば荷重は底で受けられます。はみ出して、立ち上がりや縁の近くに乗るなら、その組み合わせは重ねない。同じ器どうしが重ねやすいのは、高台がちょうど収まるよう設計されているからで、違う器を混ぜた瞬間にこの前提が崩れます。

素材は「硬さの順」に並べると、組み合わせの見当がつく

おおまかな硬さの順は、磁器 → 炻器・半磁器 → 陶器(土もの)、そして別枠にガラス・漆器・木。この順を頭に置いて、次のように考えます。

  • 磁器どうし:重ねやすい組み合わせ。ただし高台が硬いので、擦り傷は出ます。枚数と抜き方で抑える。
  • 磁器を陶器の上に乗せる:いちばん避けたい形。硬い高台が、柔らかめの釉薬を削ります。逆(陶器を磁器の上)のほうがまだ穏やかです。
  • 陶器どうし:土の粒が出た高台は意外と攻撃的です。粉引や刷毛目のように吸水する器は、傷より先に汚れやシミが入ることがあるので、乾ききってから重ねる。
  • 上絵付け・金彩銀彩:絵の上を擦ると落ちます。重ねるなら必ず何か挟む、が基本。
  • ガラス:重ねない。入れ子にすると噛み込んで抜けなくなり、無理に外そうとして割れます。
  • 漆器・木:同じ素材どうしで、完全に乾いてから。硬い器と混ぜない。

枚数の目安は数字より、片手で持ち上げて安定する高さまで。片手で取れない高さに積むと、人は必ず斜めに引き抜きます。そこで擦り傷が生まれます。

挟むか、立てるか。判断は「一日の出し入れ回数」

間に紙やフェルトを挟む方法は確かに有効ですが、全部にやると続きません。続かない保護は、いつの間にか一枚だけ抜けていて、結局そこから傷が入ります。だから回数で分けます。

**毎日出す器(ごはん茶碗、取り皿、汁椀)**は、挟まない前提で組む。代わりに、同じ器だけで積む・枚数を減らす・置き場所を手前にする。挟む手間を省くほうが、結果として乱暴に扱わずに済みます。

週に一、二回の器は、挟む価値があります。繰り返し使えるフェルトや不織布の丸いシート、キッチンペーパーを一枚。紙は湿気を吸うので、濡れたまま重ねるのだけは避けてください。

年に数回しか出さない器は、挟んだうえで布や紙で包んでもいい。ただし長期保管で紙が湿気を含むと貼り付くことがあるので、風の通る場所に置くか、季節の変わり目に一度出して乾かします。

立てるのは、毎日使う平皿に向いています。重ねないので擦り傷は出ません。代わりに、倒れたときの欠けと、仕切りが縁に当たる問題が出ます。皿立てを選ぶときは、仕切りが器の縁ではなく高台側に当たる向きで入るか、仕切りの幅に余裕があるか、底にクッションがあるかを見てください。幅がぎりぎりだと、出し入れのたびに縁を削ります。

出し入れの動線を一か所だけ直す

傷の多くは、棚から抜く数秒で付きます。直すのは一点だけで十分です。滑らせず、いったん持ち上げてから引く。 そのためには、積んだ器の上に指一本分の余裕が要ります。棚板の高さがぎりぎりなら、積む枚数を一枚減らす。これだけで擦り傷の出方は変わります。

あとは、濡れたまま重ねないこと。水の膜があると滑って動きやすく、吸水性のある器では匂いの原因にもなります。乾かす場所が足りないなら、重ねる器の数そのものを見直したほうが早いです。

うまくいかないこともあります。貫入(釉薬の細かいひび)に入った色は基本的に戻りませんし、高台の当たりで付いた傷も消えません。できるのは、これ以上増やさないことだけです。それと、器を減らさずに収納だけで解決しようとすると、たいてい行き詰まります。

決める順番と、実物で確かめたいこと

整理すると、こうなります。1)高台を触って、ざらつきと径を見る。2)素材の硬さが近いものだけでまとめる。3)出し入れ回数で、挟む・挟まない・立てるを振り分ける。4)片手で持てる高さに枚数を抑える。5)抜くときは持ち上げる。

買い足すときも同じです。見込みの広さと高台の収まりは、写真では分かりません。手に取って裏を返し、今持っている器と重ねたらどこで接するかを想像してみる。重ねる前提の器なら、高台がなめらかに仕上げてあるかどうかも手で分かります。暮らしの雑貨の売場でも、気になる器は裏返して高台を見てもらうようにしています。家にある器のサイズをひとつ控えて来ていただけると、重ねられる相手かどうかの相談がしやすくなります。

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