メガネのこと

跳ね上げ式メガネの使い方は、上げ下げの回数で決める

新聞を読むときに外して、スマホを見るときにまた外して、料理の途中で手元の分量を見ようとして、濡れた手のままメガネに触れてしまう。「外す」という動作そのものは一瞬なのに、一日を通すとやけに煩わしい。そういう相談を売場でよく受けます。

この記事では、跳ね上げ式(フリップアップ)がどんなものかを紹介するのではなく、自分が1日に何回メガネを上げ下げしているかを数えて、跳ね上げ式が向くのか、2本持ちや老眼鏡の併用で足りるのかを決めるところまでをまとめます。回数という行動量で見ると、意外とあっさり決まります。

まず三日、「外した回数」だけを数える

跳ね上げ式が便利かどうかは、見え方の好みではなく、動作の回数で決まります。回数が少なければ、どんなに構造が良くても恩恵は小さい。逆に一日に何十回も外しているなら、その一回ずつの煩わしさが積み上がっています。

数え方は簡単で、三日間だけ、メガネを外した(またはずらした、額に乗せた)回数を、ざっくりで構わないのでメモします。正確な数字は要りません。見るのは桁です。

書き出すのは次の二つだけ。

  • 何のために外したか(手元の文字、スマホ、調理、化粧、作業、など)
  • どこで外したか(食卓、台所、デスク、外出先、など)

三日やると、たいてい偏りが出ます。「全部デスクで起きている」「台所でばかり外している」「外出先で一日2回だけ」。この偏り方が、後の判断をほぼ決めます。

ちなみに「外す」とまでいかなくても、顎を上げてレンズの下から覗く、フレームをずり下げるといった動作も1回に数えてください。本人は無自覚でも、回数としては外しているのと同じ負荷がかかっています。

回数が多くなりやすい場面は、だいたい決まっている

数える前に見当をつけたい方のために、上げ下げが増えやすい場面を挙げておきます。自分に当てはまるものが多いほど、回数は多く出ます。

読書・書類仕事。これは連続して手元を見るので、意外と回数は増えません。外すのは最初の1回、戻すのは終わりの1回。回数より「外している時間の長さ」が問題になるタイプです。

調理。ここは回数が跳ね上がります。レシピの小さい文字、計量カップの目盛り、火加減、そして顔を上げて鍋全体を見る。この往復が1食につき何度も起きます。さらに手が濡れている・油がついていることが多く、「外すためにいちいち手を拭く」という余計な工程までついてきます。

スマホ。短い時間に何度も見るので、回数だけなら最多になりがちです。ただしスマホは持つ位置を自分で変えられるので、距離のほうを動かして対処している人も多い。

手芸・模型・釣りの仕掛け・工具を使う作業。手元と周囲を何度も行き来し、しかも両手がふさがっています。ここが多い人は、跳ね上げ式の恩恵がいちばん分かりやすい層です。

接客・会話を挟む仕事。手元の書類を見て、顔を上げて相手を見る。外して話すと相手の表情が見えにくい、かけたまま手元を見ると読みにくい、という板挟みになります。

化粧・髭剃り・爪切り。鏡越しで、そもそもメガネをかけたままでは作業ができない場面。これは跳ね上げ式でも解決しにくい部類です(後述します)。

回数別の判断。多いなら跳ね上げ式、少ないなら別の手

三日分を均して、一日あたりの回数でおおまかに分けます。これは目安であって、絶対の基準ではありません。

一日おおよそ20回を超える人。しかもその多くが「両手がふさがっている場面」「移動しながら」で起きているなら、跳ね上げ式が候補に入ります。跳ね上げ式は、前枠(レンズの入った部分)を上にはね上げて、顔からメガネを外さずに裸眼側の見え方に切り替える構造です。メガネを手放さないこと、置き場所を探さなくていいことが、この構造の実質的な価値です。外す動作が消えるのではなく、「外したメガネをどこに置くか」という付随作業が消える、と考えると実態に近い。

一日5〜20回くらいの人。ここがいちばん迷う帯です。判断材料は、回数より場所が一か所に集まっているかどうか。デスクだけ、台所だけ、と場所が固定されているなら、その場所に置きっぱなしにする2本持ちのほうが素直です。置き場所が決まっているなら、探す手間もかかりません。逆に場所がバラバラで、持ち歩いた先で起きているなら、跳ね上げ式のほうが身軽です。

一日5回以下の人。わざわざ構造を変えるほどではありません。手元用の一本を使う場所に置いておく、あるいは今のメガネのかけ方・位置を調整してもらうほうが、手数としては少なくて済みます。

もう一つ、回数とは別の軸があります。外している時間が長いか、短いか。短い切り替えが何度も起きるなら跳ね上げ式、一度外したら30分以上そのまま、という使い方なら2本持ちのほうが合います。跳ね上げ式は上げている間ずっと前枠が額の上にあるので、長時間上げっぱなしにする用途には向きません。

跳ね上げ式を選ぶときに、見落としやすい点

構造が増えるぶん、気をつけたいことも増えます。先に正直に書いておきます。

上げたときの見た目と、当たり方。前枠を上げると、額の前に枠が張り出します。前髪がある方は髪に当たる、帽子をかぶると干渉する、ということが実際に起きます。これは数値では分からないので、かけて上げてみるしかありません。

跳ね上げの機構そのものが可動部。丁番と同じで、動かす回数が多いほど、ゆるみや戻りの渋さが出ることがあります。回数が多い人向けの構造なのに、回数が多いほど機構に負荷がかかる、という面は持っています。定期的にかけ具合を見てもらうことを前提にしておくと安心です。

上げた状態での見え方。前枠を上げると、裸眼で見ることになります。裸眼で手元がはっきりしない方の場合、上げても解決しません。ここは「跳ね上げ式が合うかどうか」ではなく、どういう度数の組み立てにするかの話になります。たとえば前枠に遠く用、下側に手元用を置くといった組み合わせ方もあり、構造より中身の設計のほうが結果を左右します。

化粧や髭剃りには向きにくい。顔のすぐ前に枠が残るので、肌に手を入れる作業では結局外すことになります。この用途が主目的なら、別の方法を考えたほうがいい。

フレームの選択肢。可動部がある分、形や大きさの自由度は通常のフレームより狭くなります。顔幅や眉の位置との兼ね合いで、思っていた形が選べないこともあります。

跳ね上げ式以外の、現実的な選択肢

回数が中くらい、あるいは跳ね上げ式が形として合わなかった場合の手も書いておきます。

場所固定の2本持ち。台所の壁際、デスクの引き出し、ベッドサイド。使う場所に置きっぱなしにするやり方です。持ち歩かない前提にすると、置き場所を一か所に決めるだけで運用が成立します。欠点は、置いた場所にいないときに使えないこと。

手元専用の一本を併用する。読書や手芸のように、ひとつの距離に長く留まる作業なら、その距離に合わせた一本がいちばん楽です。切り替えの回数が少ない人ほど、これで足ります。

一本の中で距離を分ける。遠近両用や、室内・デスクワーク寄りに寄せた中近といったレンズの組み立て方があります。中近は中間域の設定を遠く寄りに振ることもできるので、「どこまで遠くを見たいか」によって詰め方が変わります。そもそも上げ下げの回数を減らす方向の解決なので、回数が多い人ほど検討の価値があります。ただし、どの距離を広く取るかは必ず何かとの引き換えになるため、生活の時間配分から決める必要があります。

今のメガネの位置を調整する。「レンズの下から覗く」癖が出ている場合、かける高さが合っていないだけ、ということもあります。これは買い替えずに済む可能性がある話なので、先に確かめておいて損はありません。

なお、見えにくさの原因が目そのものにある場合は、メガネ側では解決しません。かすむ、まぶしい、片目だけ見え方が違う、急に変わった、といったことがあれば、まず眼科を受診してください。眼の症状や病気の判断は眼科医の領域で、メガネ店でできるのは見え方の相談とメガネの調整までです。ここは線を引いておきます。

決める順番のまとめ

  1. 三日間、外した回数と「何のため・どこで」をメモする
  2. 一日あたりの回数を出す。20回超なら跳ね上げ式が候補、5回以下なら別の手
  3. 5〜20回なら、場所が一か所に集まっているかで分ける(集まる→2本持ち/散る→跳ね上げ式)
  4. 一回あたり外している時間を見る(短く何度も→跳ね上げ式/長く一度→2本持ち)
  5. 上げた状態で手元が見えるか、前髪・帽子と干渉しないかを、実際にかけて確かめる

最後の5番だけは、数字やカタログでは絶対に分かりません。前枠を上げたときに髪に触れるか、下ろしたときに同じ位置に戻るか、上げたまま顔を動かして邪魔にならないか。これは実物を顔に乗せて、何度か動かしてみるのがいちばん早い。

メガネ・サングラスの売場には一級眼鏡作製技能士が常駐していて、検眼は無料です。跳ね上げ式が自分に合うのか、2本に分けたほうがいいのか、レンズの組み立てで減らせる回数なのか——三日分のメモを持ってきていただければ、そこから一緒に考えられます。数えてみて「思ったより少なかった」なら、それも立派な結論です。

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